はみごのぼやき
犬山道節忠与

この人はお坊ちゃんだ。育ちがよい。何となく、礼儀正しいというか、ふとした仕草に育ちの良さが出そうな感じがする。 この御方は、ちゃんとエスコートしてくれるに違いない。

武家の出身なので、そういう可能性もあっただろうが、いきなり父親を亡くすわ、妹のことにしても、一番近しい者(力二と尺八)まで失ってしまう。 その現実を認識したり、受け入れる間もなく、突然現れた運命の義兄弟とやらに振り回され(少なくとも彼にとってはそうであったと思う)、戸惑いつつも、失ったものが大きすぎて、受け止められずに、一人で辛かったのではないかと思う。
浜路(睦月)のことにしても、突然のことであり、後悔もあったかもしれない。力二と尺八に至っては、こんな事になるとは思いも寄らなかっただろう。
そんなこんなで、最初の方は、気持ちの整理のつかぬまま、荒れ気味だったのではないだろうか。一人になって(山を下りて)から、冷静に考えたのだろう。一人にならずとも、それくらいのことは分かっていたとは思うが。

根本的には、いい人だと思う。「若様」的に。

本当にしんどいことは、人に言わずに、一人でやってのけるような人。だからといって、他人にそれを求めることはない。

動き的に信乃を守っているのは、この人だと思う。

「ばーか、何やってんだよ」とか言いつつ、しっかりフォローしてくれるお兄ちゃん。「何やねん、おまえ」とか言いつつ(あくまで軽く)、甘えさせてくれる人。
面倒見は良いんだけど、誰にでもというわけでもなく、その対象は己の分に準じる。身内(八犬士)では、信乃がその対象だろう。

『打倒 扇ガ谷定正』を掲げているが、他の犬士たちに頼る気はないどころか、「彼らには、無関係だ」と考えていそう。あくまで、それは、個人の問題だと思っているのだろう。

あまり信乃以外と一緒にいるところが想像できない。何だかんだで、さりげなく守ったり、フォローしたりしていた気がする。

皆の知らないところで活躍していそう。密かに、皆を守っていたのではないかと。結構沢山の人を斬ったのではないだろうか。

隣に座っている人が寝てしまって、もたれかかってきても、そのままもたれさせてくれそう。
多少我が儘だとか、頑固だとか、意地っ張りだと言われるようなタイプが、甘えることの出来る人。

お酒に強い。誰も酔いつぶれた姿を見たことはなさそう。
きっと一人で酒を飲むんだよ、この人は。

夏の夜、闇、闇にある一筋の(ぼやけた)光、蛍等のイメージ。



八犬士選択



©2003,2009.tukuyomi.All Rights Reserved.