はみごのぼやき
犬村大角礼儀

彼は、「綺麗なもの」だけ見ようとしたように思われがちだが、実際は、そうではないのではないだろうか。

非常に頭の良い人物である。
恐らくは、父親の姿をしたものが、父親でないであろう事は、薄々勘づいてはいただろう。 しかし、それでは、実父はどうしたのか。さらに、本当の父親ではないという証拠もなく、例え、魔物に取り憑かれていたとしても、父は父だと思ったのか。 いずれにせよ、何も分からずに泣いていたわけではないはずだ。
しかし、確かめる術がなかった。いや、「確かめる」ことに躊躇いもあっただろう。
父親でなければ、何なのか。父親はどうしたのか。そういったことを、一人、胸の内で考えていたのではないだろうか。 父親かもしれないという思いもあったのだろうが、妖怪とはいえ、実父の姿をしたモノから、あれだけの仕打ちを受けても、耐えているあたり、この人もかなり過酷な体験をしている。

「綺麗なもの」だけを見ようとしたわけではなく、この人自身が、きれいな心の持ち主だと考えた方が、納得がいく。

雛衣のことに関しても、信じたい気持ちと、認めたくない気持ち、とにかく、彼女を愛していたからこそだと思う。

ただ、大角は、「疲れていた」のではないかと、最近になって思うようになった。

一人で背負い込んで、吐き出さないタイプ。
攻撃が内へと向かうタイプ。結局は、己を苦しめてしまっている。
苦しんでいたのでしょう。

自分を責めていたのでしょうね。
本当は、とても優しい人。

父親のことにしても、雛衣のことにしても、自分の責任にしていそう。

何でも背負い込んでしまうのに、人にはあまり頼らない。

穏やかな印象がつきまとう。
優しく笑って(微笑んで)くれそうな人。

ポーカーフェイスな面あり。
感情を抑えることの出来る人で(抑えすぎることもある)、冷静な時は、軍師とか、その類の役割を担うような人。

一人で勝手に苦悩することも…。
気付いた時には、もう倒れている。
優しすぎて壊れてしまうようなイメージ。

断じて、おっさんくさくない。美丈夫。

繊細。
手先は器用だが、所謂「器用貧乏」タイプ。
生き方というより、自分のことに関して不器用。

「誠実であろう」とする人。

横で眠ってしまったら、起こさないように、ベッドまで運んで、布団を掛けてくれるのだろう。

雨上がりのきれいな、優しい風景の似合う人。



八犬士選択



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